監督:御法川修
出演:松田美由紀、柄本明、片山瞳、松田龍平、市川実日子、他
自分には、食わず嫌い、マニュアル主義(もしくは権威主義)という悪癖がありまして、評価の定まった監督の作品ばかり見てしまいます。
そこを打破して新たな世界を広げたいというのが、このブログを始めた意義な訳ですが・・・。
監督デビュー作というとどうしても躊躇してしまいます。
しかもこの映画の売りは「珠玉の映像詩」。
ありふれた日常スケッチが退屈に展開されそうな匂いがして危険でした。
しかし杞憂だった。
全編を通じて「私は詩人だ」というような嫌味な感じは皆無です。
オムニバス5話のそれぞれは、トリュフォーの映画ように、主人公のモノローグでつづられていきます。
その台詞は、誰もが普段自然に考える程度のシンプルなものです。
それは8mmフィルムで撮影されたという画面とマッチして、自意識過剰になりすぎず、現実の世界にきちんと足をつけている登場人物たちを、的確に描いていきます。
特に感心したのは新人・片山瞳の第3章と、市川実日子の第4章です。
前者は、恋人との関係に少しだけ悩む女性が、自動販売機のコーヒーを飲むことで何かを解決するという話なのですが、小道具である自販機が神々しくみえるのは実に感動的です。
後者の市川実日子は、これまでややぎこちない印象の女優だと思っていたのですが、ここでの彼女は素晴らしい。
夫を亡くした母を思う一人暮らしの娘という役を演じるのではなく、現実の自分のほうに引き寄せた芝居をすることで、最後に観客をこの映画に抱き寄せることに成功しています。
「世界はときどき美しい」
タイトルどおりの佳作です。

